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Bスポット療法

Bスポット療法


この鼻の奥のツボに起きる炎症を上咽頭炎(鼻咽腔炎、Bスポット炎)と言い、鼻やのどから塩化亜鉛という薬を塗って治療します。(Bスポット療法)手術もせず、薬も飲まず、塩化亜鉛を浸した綿棒1本で済む治療です。

1.上咽頭炎の炎症、炎症の放散による症状に対する作用

(例)頭痛、顔面痛、後鼻漏、肩こり、首こり、咳喘息、のどの違和感、のど痛、鼻づまり、慢性的な痰

2.自律神経の制御作用

Bスポットを刺激すると自律神経が敏感に反応するので、自律神経失調症によく効きます。
(例)浮動性めまい、起立性調節障害、全身倦怠感、過敏性腸症候群、胃の不快感、うつ、しびれ、不眠症、不安障害、微熱、全身痛、むずむず脚症候群

3.遠隔部位の疾患に対する作用

Bスポットから遠いひざ関節の痛みやIgA腎症も、近くにある扁桃の炎症も改善します。いわば遠隔操作を行うリモコンスイッチと言えるでしょう。

慢性上咽頭炎に対するBスポット療法

(EAT)と鼻腔内翼口蓋神経節刺激法

鼻の奥の突き当りを上咽頭(鼻咽腔:びいんくう、Bスポット)と呼びます。
この上咽頭に急性炎症が起きた状態が風邪であり、慢性炎症となったものが慢性上咽頭炎です。
慢性上咽頭炎になると、鼻水がのどに降りて来る後鼻漏をはじめとする「のど」の症状の他に、頭痛、肩こりなどの他、病巣感染症といって皮膚や腎臓、関節など離れた臓器に障害が起きることもあります。慢性上咽頭炎は自律神経系や免疫系に影響を与えるため、自律神経障害による多彩な症状やIgA腎症、掌蹠膿疱症などの様々な自己免疫疾患の病態悪化に関連するのです。
この上咽頭に流入する血管は細く、内服薬が到達しません。塩化亜鉛という薬を塗って、強く「こする」ことでしか治療効果が出ません。この治療法は鼻咽腔の頭文字「B」をとって、Bスポット療法と呼びます。最近では、上咽頭擦過療法EAT:Epipharyngeal Abrasive Therapy)とも呼ばれるようになってきました。最近では、コロナ後後遺症(LongCOVID)の有効な治療法の一つとして、このBスポット療法(EAT)が注目されています。

ただ、炎症が強ければ強いほど、塩化亜鉛でこすると一時的に出血して一過性の痛みを生じます。そこで当院では、上咽頭を電子スコープで観察して上咽頭炎と診断したら、炎症の範囲と重症度に応じて擦過法に工夫を凝らしています。すなわち、患者さんが耐えられる痛みの程度に合わせて、次の段階のいずれかまで施行します。


まず、麻酔液を両側鼻腔内に噴霧する。鼻中隔湾曲症などがあって鼻腔内が狭い時は、麻酔液をしみこませた綿花を挿入して麻酔することがある。


(1)右鼻穴と左鼻穴から1本の真っ直ぐの綿棒で上咽頭に塩化亜鉛を塗布する。次いでこする。

  綿棒が2本入れば2本の綿棒で同時にこする。
(2)右鼻穴と左鼻穴から下に曲がった綿棒で上咽頭に塩化亜鉛をこすって塗布する。
(3)右鼻穴と左鼻穴から上に曲がった綿棒で上咽頭に塩化亜鉛をこすって塗布する。
(4)上咽頭を電子スコープで直視しながら、最も炎症の強い所に、鼻から綿棒で塩化亜鉛を塗布する
  この時、左右の端にあるローゼンミュラー窩にも塩化亜鉛を塗布する
(5)口の中から口蓋垂(のどちんこ)の後ろに曲がった綿棒を挿入して、左から右に上咽頭に塩化亜鉛を塗布する。最初は力を入れずにさするように塗布する。この段階をクリアしたら、少し力を入れてこすって塗布する。この段階もクリアしたら、力一杯にこすって塗布する。更に必要なら、左から右にこすって行って、次いで右から左にこすって帰ってくる。

1928年に大阪医科大学初代耳鼻咽喉科教授の山崎春三氏が「13症状と密接な関係にある」上咽頭炎を発見しました。
一方、1950年代に東京医科歯科大学耳鼻咽喉科の堀口伸作初代教授も上咽頭炎を発見し、更にBスポット療法を考案しました。
2010年、腎臓内科医の堀田修氏が「病巣感染としての慢性上咽頭炎の意義」を発表し、IgA腎症の増悪を予防する方法としてもBスポット療法が脚光を浴びて来ました。堀田氏は難治性疾患であるIgA腎症の治療として扁摘パルス療法を考案して大きな成果を挙げましたが、それでも扁摘パルス療法以後も再燃する症例が出て悩んでいた時に、堀口先生の論文を読んで病巣感染源としての上咽頭炎に着目してBスポット療法を施行した所、良い効果が得られたとのことです。慢性上咽頭炎は、腎臓だけでなく、上咽頭から離れた様々な部位に新たな炎症を起こし、様々な不調や病気(二次疾患)の要因になります。以後、耳鼻咽喉科においても、副鼻腔炎の治療を続けても治らなかった後鼻漏がBスポット療法で改善した報告などが相次ぎ、耳鼻咽喉の症状を改善する治療としても注目を浴びてきました。

 慢性上咽頭炎に関係する症状と病気を列挙します。これらの症状や病気はBスポット療法によって改善する可能性があるのです。

対象となる症状

上咽頭炎の炎症、炎症の放散による症状

1. つばを飲むとき,のどがいつも痛い、他歯痛、舌痛
2. のどの奥がつまった感じがする(異物感がある)
3. のどがイガイガする、声がれ、声が出ない
4. 頭痛(慢性的に続く頭痛)、肩こり、首こり、顎関節障害、上背部重苦感
5. 後鼻漏(鼻水が鼻の奥からのどに流れる)、副鼻腔炎の治療を続けているが治らない 
6. 鼻づまり
7. 朝起きると、たんがからむ(慢性痰)、むせやすい、胸がムカムカする
8. 風邪は治ったのに原因不明の咳がいつまでも続いている(呼吸困難は無く、咳だけが長引く)、或いは咳喘息と診断されて治療しているが治らない
9. すぐに風邪をひいてしまう、慢性風邪(まわりの人にうつらない風邪)
10. 耳が「ふさがっている」「つまっている」、耳がぼーっとする
11. 自分の声が耳の中で大きく響く、自分の呼吸音が聞こえる
12. 自分の声の大きさがわからない
13. 耳抜きがうまくできない
14. 聞こえが悪い、相手の話が聞き取りにくい

神経内分泌系の乱れによる症状

1.慢性疲労症候群(原因不明の全身倦怠感が続く、特に午前中)、体がずっとだるい
2.浮動性めまい(フワフワ感)
3.過敏性腸症候群(下痢、便秘、腹痛)
4.胃の不快感
5.うつ、思考力・記憶力・集中力の低下、気分が落ち込みやすい、機能性胃腸障害(胃もたれ)
6.しびれ
7.不眠症
8.微熱
9.全身痛
10.むずむず脚症候群
11.不安障害
12.起立性調節障害

自己免疫の乱れによる二次疾患

1.IgA腎症
2.ネフローゼ症候群
3.自己免疫疾患、関節リウマチ、潰瘍性大腸炎
4.掌蹠膿疱症、アトピー性皮膚炎、慢性湿疹、乾癬
5.反応性関節炎
6.胸肋鎖骨関節過形成症

1. 羞明(光がまぶしい)
2. 月経異常

Bスポット療法で痛みが心配な方へ

通常、Bスポット療法施行前に鼻腔内に麻酔液を噴霧していますが、痛みを強く訴える方には、上咽頭に直接麻酔液を塗布してから、通常より薄めた塩化亜鉛を塗布することがあります。

Bスポット療法の通院

Bスポット療法は、週1~2回の通院が好ましいですが、嶺南地方や奥越、他県など遠方から通院されている方もおられます。
このような方の場合、頻回の通院が困難な場合もありますが、月1回程度の通院でもかなりの改善がみられことも少なくないので、間隔は空いても継続することが肝要と考えます。
塩化亜鉛塗布時の痛みや出血がなくなり、かつ症状が消えた時点でいったん終了としています。再発予防のためには、その後月1回程度の上咽頭の所見観察とBスポット療法施行が有効です。

Bスポット療法で改善が不十分な場合
新型コロナ感染症後後遺症症候群の方
慢性疲労症候群の方


特に迷走神経の改善が不十分な場合は、
Bスポット療法施行時に

迷走神経を刺激する鼻腔内翼口蓋神経節刺激法を施行します。
手技は鼻腔内から綿棒で翼口蓋神経節に薬液を塗布します。
新型コロナ感染症後後遺症症候群や慢性疲労症候群の方にも効果があります。
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