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子どものいびき・小児睡眠時無呼吸症候群

小児睡眠時無呼吸症候群とは

大人だけでなく、子供にも睡眠時無呼吸症候群という大変危険な病気があります。子供はすやすや眠っているのが当たり前です。もし子供が大きないびきをかいて寝ていたら、よく眠っていると思われるかもしれませんが、実は眠っているうちに何度も呼吸が止まっているのかもしれません。
睡眠時無呼吸症候群には中枢性と閉塞性がありますが、子供の睡眠時無呼吸症候群はそのほとんどが閉塞性です。しかも成人とは異なる病態や臨床症状(学校成績の低下や夜尿など)があるため、成人閉塞性睡眠時無呼吸症候群と小児閉塞性無呼吸症候群は独立した疾患です。
従って睡眠時無呼吸症候群は、成人と小児では基準が異なります。睡眠時無呼吸症候群の定義は、
成人の場合は、「10秒以上の呼吸停止が、一晩(7時間の睡眠中)に30回以上、または1時間に5回以上ある」
小児の場合は、「無呼吸時間が10秒に至らなくても、2回分の呼吸停止があれば無呼吸と診断できる」
また、小児における重症度分類も成人と異なり、
1<AHI<5   軽症
5<AHI<10  中等症
10<AHI    重症
となります。

小児睡眠時無呼吸症候群の原因と治療

子どものいびき・小児睡眠時無呼吸症候群の原因

 子供が睡眠時無呼吸症候群になると、睡眠が深い時間に多く分泌される成長ホルモン(体の様々な部分に成長を促進させるホルモン)が減る結果、成長に悪影響が及ぼされるのです。
この閉塞ポイントは4つあります。
 <原因>
(1)アレルギー性鼻炎、慢性副鼻腔炎(蓄膿症)、風邪などによる、鼻の前方レベルの閉塞(鼻づまり)
幼少時は経口の通路が成人より狭いために鼻呼吸が成人以上に重要で、鼻炎による軽度の鼻閉でもいびきや小児睡眠時無呼吸症候群の原因になり、短時間の無呼吸により体内の酸素が足らなくなります。子供の花粉症は増加傾向にあり、要注意です。
(2)肥満による閉塞
子供の生活習慣病の増加の結果、肥満になり、気道が狭くなります。子供の肥満も増加傾向にあり、要注意です。
(3)大きなアデノイドによる閉塞
鼻の後方レベルでの鼻呼吸の障害がこれにあたります。
(4)大きな扁桃腺によるのどレベルの障害による閉塞
口を開けて見える場所にある、扁桃腺が腫れて呼吸がしづらくなることがこれにあたります。
※これらが同時に起きて複数の場所で閉塞している場合もあります。

子どものいびき・小児睡眠時無呼吸症候群の治療

<治療>
(1)の「花粉症を含むアレルギー性の場合にはまずは点鼻液や抗アレルギー薬の内服などの薬物療法を行い、それでも改善しなければ、舌下免疫療法やレーザー治療(当院で施行)を行います。発達途中の子供の鼻には、レーザー以外の、いわゆるメスを使った手術は推奨されません。
慢性副鼻腔炎は、アレルギー性鼻炎が長引いて鼻づまりになって発症するケースも多いですが、当院で鼻洗浄、ネブライザー、内服にて治療します。大きなポリープがあれば切除を検討しますが、原則として発達途上の小児に対しては鼻の手術は施行しません。
軽症の場合は、これらの治療で十分であったり、横向き枕を使用した寝方の指導だけで十分な場合もあります。
(2)肥満の場合は減量に取り組みます。
(3)の場合には全身麻酔下にアデノイド切除術(大病院へ紹介して1週間入院)を行い、治療します。
(4)の場合には全身麻酔下に両側口蓋扁桃摘出術(大病院へ紹介して1週間入院)を行い、治療します。
 
 1880年のMcKenzieの提唱以来、閉塞性小児睡眠時無呼吸症候群においてはアデノイド切除術と両側口蓋扁桃摘出術の併用(AT)が最も効果が高いとされてきましたが、最近は手術のリスクと再発の高さについての懸念が示されてきています。 
 まず3歳児未満に対するATはリスクが高いこと、慢性的に低酸素血症になっている閉塞性無呼吸症候群の患者においては全身麻酔に使用されるモルヒネが過剰に効きすぎて気管挿管及び抜管時の酸素飽和度の低下や喉頭痙攣が多発すること、術後の症状の残存と再発(わたくしの経験においては、アデノイドはいくら切除しても完全には切除しきれず、手術して3か月後には必ず元の大きさに戻る)、手術した患者の術後7か月目の改善率が79%に対して手術しなかった患者の改善率が46%というデータが報告されてきています。

 一方、点鼻薬や内服治療による改善効果、口腔機能訓練(MFT)などのリハビリの有効性の報告から、手術を第一選択とはせず、先ずは薬物やリハビリによる治療を行い、手術したとしても、手術後も薬物投与とリハビリを行っていくのが肝要と考えます。
 
 重篤な合併症などによりアデノイド・口蓋扁桃手術が難しい症例、その他神経筋疾患を認める症例には、鼻に装着したマスクから空気を送り込むことによって呼吸を楽にするCPAP(経鼻的持続陽圧呼吸療法)を行います。小児に対応したマスクを使います(中学生から)。

 一方、顎顔面形態の奇形に伴う小児閉塞性睡眠時無呼吸症候群に対する補助的治療として、口腔内装置や、口腔機能訓練(MFT)を含めた歯科矯正治療があります。
 
 睡眠時無呼吸症候群は、成人の場合は、30代~60代の男性に多く、女性は比較的少ないのですが、更年期以降にかかりやすくなります。一方、小児の場合は、個人差はありますが、2~8歳に多く見られ、男児の方が女児より有意に罹患率が高いです。この2~8歳の時期は、ちょうど扁桃組織の肥大と、心身の発達の時期が重なります。(アデノイドは4~6歳、口蓋扁桃は5~7歳に生理的に増大)

 ただし、最近ではアレルギー性鼻炎や肥満なども原因となるため、子供でも幅広い年齢に起こります。潜在患者が多いと言われているので要注意です。

小児睡眠時無呼吸症候群の症状

(1)睡眠時の症状

●寝息が荒く、大きないびきを繰り返す。
●毎日、いびきをかく
●呼吸が数秒間止まる
●眠りが浅く、ちょっとした刺激で何度も起きる
●座ったまま寝るなど変な寝姿勢
●陥没呼吸(呼吸時にみぞおちがペコペコへこむ)
●咳込む
●寝汗、夜尿(おねしょ)が多い
●寝相が悪く、口を開けて寝ている

(2)起床時の症状

●寝起きが悪く、起こさないと起きない
●不機嫌
●口が乾いている
●頭痛があり、ぼーっとしている

(3)日常生活での症状

●鼻がいつもつまっている
●口呼吸
●アデノイド顔貌(口を開けて舌を突き出した顔つき)
●眠そう。長時間の昼寝。幼稚園や学校での居眠りが多い
●食欲の低下。食事に時間がかかる
●イライラして怒りっぽい
●集中力の低下
●注意力が散漫で、落ち着きがない

小児睡眠時無呼吸症候群の診断

 当院から貸し出しの簡易モニターOCSTで睡眠中の呼吸やいびき、心拍などをモニターします。成人の場合はOCSTのみで診断がほぼつくのですが、小児の場合はより精度の高い「入院してのモニター検査PSG」のみが唯一確定診断に有用とされています。
 しかし、PSGには人手とコストがかかり、現実的にいびきの訴えのある患者すべてに実施することは難しいのが実情です。したとしても、本人の指が小さくてセンサーがずれやすいことと、睡眠中無意識にセンサーを外しやすいので、しっかり朝まで記録ができることがほとんどない状態のようです。
 小児の簡易モニターOCSTに関しては、精度は50~70%と低く、単独の診断には無理があります。一方、信頼性が高いのがビデオモニタリングによる睡眠中の呼吸状態の撮影です。そのために睡眠中の指定した時間帯の状況を家族の方に携帯などで動画撮影していただき、子供のいびき、顔,胸部を記録してもらいます。
 呼吸障害がひどい時に、胸をはだけた状態で5分程度記録してもらうと、苦しい呼吸の時に胸がへこむ「陥没呼吸」などを確認できたりします。そして観察項目を細分化して8点以上を陽性とします。
 なお、近年は、従来は入院しなければできなかった「OCST+脳波検査」いわゆるPSGも自宅でできるようになりましたが、小児の場合は施行中にセンサーが外れやすいために一晩中センサーの管理をしている人がどうしても必要なことと、健康保険を使っての審査が必ずしも通るかどうか不確実なことから、推奨はできません。

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